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2013年5月 1日 (水)

観念的な戦略で動く米中

 米中両国は極めてイデオロギー的な国家と考える必要がある。イデオロギーは頭だけで考えて結論を出した産物で、情感とは異質な結論を出す。中国は中華思想というイデオロギーで行動している。中華の辞書には国際協調という言葉がなく、国際関係は力によって支配されるという発想しかない。これは中国3千年の歴史そのものだから、容易に変わらない。中国では帝国主義権力が全土を統治するか、天下が乱れているかのいずれしかなかったからだ。日本も中華思想の影響から列島の統一は安定をもたらすと、頭で考える人が多いが、奈良時代と明治維新後を除けば、実態は藩などの地方政権を主軸とする分権制が主体だった。中央集権制は安全保障上では有利だが、統治機構として効率的ではないことを実感していた人達が多かったからだろう。地方の実態を無視する画一的な統治なのだから。

 中国では安全保障が総てに優先する殺伐とした大陸社会の実態に即した制度を支える中華思想が発展した。これは土俗的なコンセンサスだから文献に銘記されているわけではない。中華の安全のためには辺境は極力遠方にあることが望ましい。それは政権自体の利害と一致し、強固な思想となって今日まで伝承されてきた。中華帝国に力があれば、周辺を侵略・征服して国境を拡張することは国家的正義になる。チベット・西域、尖閣や南シナ海の領土問題はこの文脈で読み解く必要がある。中国は伝統的に陸軍国家だったが、近年海洋戦略を重視しているのは海洋も重要な辺境だと認識を転換したからに他ならない。これは中国人の生活実感ではなく、あるべき国の形であるから、イデオロギーの範疇になる。西欧思想だけをイデオロギーと規定していては実態が見えない。中国が容易に共産国家を建設したのは、中華思想と共産主義思想が類似性の高いイデオロギーだからと思われる。共産主義も帝国主義、中央集権、武力侵略を肯定する。

 アメリカは合衆国だから中華的ではない。安全保障を連邦政府に任せ、民治は各州に委ねる制度は合理的だ。しかしアメリカには歴史が無いという致命的欠陥がある。歴史は民衆のコンセンサスの履歴で、民衆の価値観共有のバロメーターだが、これがない状況で高度の統治を実現しようとすれば、土俗的情感に依存しない方向を求めるしかなく、イデオロギーに走りやすい。民主主義を守る世界の警察国家を任じているのも、一種のイデオロギー活動と言えるだろう。イデオロギーの怖さは暴走に歯止めがかかりにくいことで、これはソ連・中国・カンボジアで実験済みの事である。これに歯止めをかけるのは情感であり、情感は極めて土俗的な存在である。従って、米国民に土俗的感情である信義や正義感を望んでも裏切られる可能性が高い。イデオロギー国家にもその国民にもその様なものは希薄であると考える必要がある。アメリカ人がキリスト教に敬虔な思いを馳せる事に批判的な人が多い。彼らの信じるキリスト教が未だに進化論を否定し、神が天地を創造したと信じているからだが、彼らがそこに土俗的情感を依拠し続けている事を考えれば、彼らの活動はもっと肯定的に判断する見解はあり得る様に見える。しかし米国全体を見れば、多民族を統合する思想はやはりイデオロギー的にならざるを得ないだろう。

 イデオロギーに支配される国は極めてドライで功利的になる傾向があることは止むを得ない事になる。

 アメリカが国力を減じ、中国と取引する日が来るのは時間の問題かもしれない。昨今の中国の異質なイデオロギーに危機感を持ち、隠然とした経済制裁に走りつつある米国だが、それが成功する保証は無い。米国ではその先の戦略も検討されているだろう。中国にとって民主主義は受け入れ不可能なイデオロギーだと認めつつあり、中国と取引する場面を想定する段階にあると推測される。中間線を何処に引くかはその時の情勢次第だが、日本も韓国も中国側に置かれる可能性が高い。現代の科学技術を使えば、海洋は既に自然の障壁とは言えないから、日本に中国軍が侵攻する事もあり得る。その時日本はどの様に対応するか、今から考えておく必要があるだろう。米国は将来の中国との円滑な取引の条件として、日本を非武装状態に留めておきたいと考えている。それが今後の中国との関係維持に重要な要件になるからだ。中国は米国がその政策を維持していれば、当面は目立った敵対行為はしないだろう。将来の交渉のテーブルでの議題を双方が想定しているからだ。日本が重武装していると交渉は全く違ったものになるから、双方がその状態を避けようとしている。その日が来た時、日本から見れば、アメリカは日本を中国に売ったことになる。アメリカからすればそれは世界秩序の安定のための選択として自国民を納得させることになる。

中国の州になるか、李氏朝鮮の様な朝貢国になるかはその時の情勢に依存する。韓国は既にその覚悟を決めている様に振舞い始めた。長年の歴史が韓国民の行動を自律的に決めている様に見える。韓国は今後中国以上に日本に対して敵対的になるだろう。中国もそれを見越して日本に強圧的になり、更に韓国を抱き込もうとする。日本の左翼・リベラリストもその同類だろうか。日本国民である事より個人である事を優先すれば、率先して親中韓的になることは功利的判断かもしれない。

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