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2013年4月 7日 (日)

中華経済の発展は世界の危機を生む

 中華経済の特徴は、コピー商品を低賃金で大量生産することにある。問題は模倣を悪としない理由は、発展途上国も豊かになる権利があるという事だろうか。小国が発展途上の一時期にこれを実施するのは仕方がないが、経済力のある大国がこれをやり続けると世界経済は破壊される。先進国の高失業率問題と、振れの大きい景気循環はこれが原因になっている。裏を返して言えば、先進国はこれらの諸問題を解決する為の一つの有力な手段として、知的財産権保護という制度を堅持している。

 現代社会は恒常的に生産過剰になる宿命を負っている。科学技術の進展がこれを可能にしてしまったから、今更元には戻れないし、産業革命以前の世界に戻りたいとはだれも考えない。その時々の社会の問題点を取り繕う様に継ぎはぎしながら、より繁栄する社会に移行してきた経緯を踏まえ、今後もこの制度を継続するしかないだろう。

 生産力が過剰な状況を緩和する為には、新しい商品を開発する事が最も有効であり、現在それは進行中である。商品は形あるものとは限らない。有用なサービスも、需要の喚起に役立つだけでなく、サービスとして完結する商品や業態も多数ある。それらの開発は民間企業に委ねられ、民間企業は資源を投入して開発に励む。それを後押しする制度が知的財産権の保護制度である。この制度の規制が厳しいほど創業者利益が得やすくなるから、開発インセンティブが高まり、商品の過剰生産や失業問題は緩和される。何故なら、企業は開発業務という利益に直結しない部署に多数の人件費を払い、必要な建物、必要な機材を購入し、消費に貢献するからである。それに必要な原資は、既に開発した商品が知的財産権により保護されていれば、そこから産まれる高収益によって賄うことが出来る様になる。知的財産権保護制度により保証される新商品の利潤が高ければ、商品開発部門に従事するエキスパートの賃金は高騰し、人々はその業種に従事する事を望む度合いが高まる。そうなれば教育産業なども活性化され、新たな業種も形成され既存の商品・サービスの消費者となる。現在の日本企業では、直接生産・流通に従事せず、商品サービスの開発に従事している人の割合はかなり高い。

 現在中華企業のしていることは、この開発業務を他国からの技術導入に依存し、生産コストだけで価格競争力を付けて商品を世界にばら撒こうとすることである。小国がするのであればまだしも、世界一の人口を誇る中国がこれに邁進すれば、特に国境を越えて取引される商品は、中華ペースの経済競争に晒される。この世界では、生産規模が大きいほど製造原価が低いのは法則に近い現実であり、販売価格と市場シェアが最重要視される。その獲得のためにする事は、あらゆる手段を講じて製造・物流コストを低減することであるが、これは生産力が過剰な状況を増幅してしまう。物が溢れているのに失業が増大し、賃金が低下するという悪循環に陥るからだ。それでも現代の製造業では生産コスト低減努力が最優先課題の様に叫ばれ、益々事態を悪化させている。僅かでも生産コストを低減するために、製造工場はどんどん海外に流出している。

 この状況を改善するために先進国が採用しようとしているのが、規制緩和である。国内の規制緩和のみならず、貿易障壁を低くする規制緩和である自由貿易協定の締結も盛んに検討されている。これは従来保護されてきた産業を破壊する恐れがあるから、社会制度に大きな摩擦を産むが、過剰生産と高失業率問題はそれに敢えて挑戦しなければならないと先進国に思わせるほどに深刻になりつつある。

 中国ではそれにどう対応しようとしているのかを概観すると、相変わらずコスト競争を継続しながら、官営的製造業に過剰生産を許し続けている。現在の中国の体制では、先進国的対策が実施できないからである。独裁政権には規制緩和はしにくい。そもそも先進国の規制は消費者保護の名目が多いが、中国にはそれは元々殆ど存在していない。その上既得権益者が権力と密接に結びついているから、痛みを伴う構造改革には抵抗勢力が強すぎる。中華世界には自由経済を制度的にコントロールする仕組みも乏しいし、共産党政権にはそれを作り出す意欲も乏しい。かなり崩れているとはいえ共産主義を標榜する政権に、自由経済社会を創造して国民を豊かにするという考え方は存在しない。共産主義の教科書には、生産力が増大すれば国民は豊かになれるとしか書かれていないことによる。

 共産主義中華が採用する一番大きな努力目標は、相変わらずより先進的な工業製品を開発コストなしに生産できる状況を作ることになる。これは中国人の善悪の判断の問題ではなく、中華国家の必然になる。中華人民の豊かさの追求にはこれしかないと正義感を以って語られる状況にすらなるだろう。世界経済がどうなろうと、中国1国の経済発展が優先するという意識は今まで見せ付けられて来たのだから、一朝一夕には変わらないだろう。中国がこの状況で邁進すれば、世界経済は破壊され、欧州危機は一層深刻になり、日本も同様な危機を抱える恐れがある。日本にはギリシャは存在しないという人がいるかもしれないが、同様の地方を国内に多数抱えているから、一旦問題が噴出すれば、欧州以上の混乱も予測される。

今まで寛容だった欧米諸国も日本も既に先進技術の中国流出には神経質になっている。今までの中国発展モデルは行き詰ってきているのだが、発展モデルを変更できなければ従来路線を完遂する努力をしなければならない。中国がネット技術を駆使して欧米・日本の先進企業の企業秘密を盗もうとする行為は、国家的戦略にならざるを得ない状況になってきている。その他のあらゆる手段を駆使して先進技術を盗作する努力を続けるだろう。中国が知的財産権を真剣に保護しようとするとは到底考えられない。悪い事に、既に破綻している共産主義思想とはいえ、共産主義政権は基本的に知的財産権を保護しない。これは見かけ上不労所得によって貧富の格差を産む仕組みなのだ。

 何処の国でも公式見解として中国のこの戦術をアカラサマに批判する事はしていない。それをすれば中国は猛烈に言い返し、懲罰としての経済制裁も躊躇しないだろう。言い勝てばそれで良いとする国民文化もそれを後押しする。この国民文化は優良な資本主義国となるための大きな障壁なのだが、この場合には有効に働く。マスコミも同様の恐れを抱いているから、誰も公式発表していない事実を公表する勇気も知的バックグラウンドもない。こうして先進国の政界の中の有志だけが、これ以上の中国経済の発展は阻止しなければならないと言い合うが、その言葉が外部に漏れる事はない。それでも米国は超大国の責任と面目の中で、一歩を踏み出し始めている様に見える。

 最近の日本の新聞の論調もその傾向を匂わせ始めているが、尖閣問題に端を発した国家間の摩擦が原因であるかのように装っている。中国経済を没落させるキャンペーンを張る事はできないだろう。特派員の生命に関わるかもしれないし、民間企業たるマスコミに正義を求めることも難しい。

  資本主義国である筈の韓国も類似の問題を抱えている。これは韓国民独特の民族性に起因している。当然中華的道徳感に由来する部分もあるが、目的のために手段を選ばない上に、手段の中に恫喝を含むことに後ろめたさを感じないという更に特殊な民族性がある様に見える。全く体制が異なる南北朝鮮でありながら、この特徴を斯くも顕著に発揮しているから、この視点は間違いが無い様に感じる。中華思想では、世界の中心似位置する中国は意に沿わない国を懲罰する権利を有していることになっており、中国がそれを濫発して世界の顰蹙を買ったが、朝鮮半島民族の状況は尋常では無い。

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